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寧波博物館/王澍(ワン・シュー)

 上海出張の帰りに寧波に寄った。上海南駅からバスでおよそ3時間。磯崎アトリエのシンセン文化中心現場監理をやっていたときの同僚である助川さんを訪ねた。彼はこの場所で自身設計による寧波它山石彫芸術博物館の現場をみている。

 早速、去年プリツカー賞を受賞した中国人建築家王澍(ワン・シュー)設計による寧波博物館を案内してもらった。むちゃくちゃカッコイイ。久しぶりにこんな魅力的な現代建築に出会った。廃材のレンガと瓦で構成された外壁の「モノ感」に圧倒される。白、黒、灰、赤、時間を経た素材の色が一見無造作に並んでいるが、美しくグラフィカルな模様が表現されている。その中に竹の型枠による荒々しいコンクリート打ち放し壁が所々に挿入されている。材料の使い方と切り替え方が絶妙で、ちょっと真似できない。その壁にランダムに窓が開けられている。また、各ボリュームが美しく空を切り裂き、ボリュームとボリュームとの間に心地よい空間をつくりだす。ラサのチベット寺院を歩いたときに体験した感じと似ている。内部外部ともに素晴らしい建築だが、エントランスの中庭に使われているプロフィリット・ガラスだけが今一つ。

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  王澍(ワン・シュー)は、杭州に業余建築工作室という設計事務所を設立し、現在中国美術学院の建築芸術学院の院長を務める。事務所名が面白い。「業余」というのは“アマチュア”という意味で、 “プロフェッショナル”という意味の「専業」の反意語。建築に対する彼の姿勢を示す。プロの建築士が新しい技術を駆使して設計する巨大ビルなんかの対極をイメージしているのではないだろうか。あるインタビューで王澍はこんなことを話している。「建築師である前に、私は一人の文人であり、建築は単なる私のアマチュア活動です」 日本同様、中国でも昔は建築家と呼ばれる職業は存在しなかった。多くの職人を指示しながら住居や庭の造作を通して自分の理想の世界をつくり上げる昔の中国の文人をイメージしているのだと思う。

 助川さんによると、王澍の建築では、杭州の中国美術学院キャンパス内の一連の建築群が実験的で非常に面白いと言う。そのうち見に行きたい。

 

建築名:寧波博物館

竣工年:2008

設計者:王澍(Wang shu

所在地:中国寧波市鄞州区首南中路1000

王澍(Wang Shu)・・・建築家。1963‐。中国ウイグル自治区ウルムチ生まれ。南京工学院(現東南大学)大学院修了後、浙江美術学院勤務。同済大学で博士号取得後、杭州中国美術学院教授就任1997年業余建築工作室設立。2012年プリツカー賞受賞。寧波博物館、寧波美術館、中国美術学院象山キャンパス建築群等を設計。

 

参考文献・・・『domus+78 中国建築師/設計師』企画/編集 于氷Yu Bing

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