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2015年11月

浄土時浄土堂

目的地に近づくと、普通の町中の小高い丘の上に鎮座する浄土堂がさらっと現れる。山の中や周囲を樹木で覆われる境内を勝手にイメージしていたので不思議な景色に映った。

浄土寺浄土堂は鎌倉時代初期に重源(ちょうげん)上人により建てられた。宋代の技術を取り入れた大仏様(天竺様)と呼ばれる工法でつくられている。現存する大仏様建築としては、他に奈良東大寺の南大門があるのみ。

浄土堂は三間×三間の正方形平面をした、単層宝形屋根を持つ極めてシンプルな建物。屋根の反りもほとんどなく、軒先には鼻隠し板が付く。シンプルすぎて物足りない外観。貧相にさえ見える。特に遠くから眺めると今一つに感じる。日本人の美意識に合わず、普及しなかったのかもしれない。各立面に柱が4本しか現れず、しかもスパンが大きく飛んでいるということも外観の寂しさを助長する。実はこの大きなスパンが浄土寺浄土堂の最大の特徴と言える。一間が6m、これは一般的な寺院建築の約二倍。建物の中に入るとよりその特徴を感じることができる。

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大きい。こんなに広々として明るいお堂は経験したことがない。とても現代建築に近い空間だ。これだけの大空間に四天柱と呼ばれる柱が4本あるのみ。4本の柱はさすがに太い。この四天柱の存在感が内部空間を支配する。天井を張っていないので柱は屋根まで一直線に伸びる。四天柱の内側には、快慶作の高さ5.3mの阿弥陀三尊立像が安置されており、外側へは、三方へ三段、つまり一本の柱から九本もの虹梁(こうりょう)と呼ばれる梁が伸びる。力強いダイナミックな空間だ。しかも各材が朱色に塗られているため、より印象も強い。この朱色が内部空間の演出をより強烈にする。

西側一面は格子蔀戸となっており、夏至の頃の夕方に内部空間いっぱいに夕日が射し込む光景がよく知られている。夕日を背に浮かび上がる阿弥陀三尊様の来迎の姿は誰もが息を飲むという。残念ながら時期が合わず、そのお姿を拝むことはできなかった。しかし、床面に大きく射し込む格子模様の夕陽とその反射光が柱や梁や組物、そして阿弥陀三尊像を照らして美しい影とのコントラストをつくりだす光景を目にすることができた。

建築名:浄土寺浄土堂

竣工年:1197

所在地:兵庫県小野市浄谷町2094

拝観料:500

旧閑谷学校

相生の現場のついでに足を延ばして旧閑谷学校を見に行ってきた。平日昼間から大勢の人々が訪れており、一大観光地になっていることにちょっと驚く。

旧閑谷学校は岡山藩主池田光政の命を受け、津田永忠により1670年に創立された庶民教育のための学校。1701年に国宝の講堂をはじめとする建築物の全容が完成された。

地を這う蛇のように延々と続く石塀が独特の景色を形づくる。かまぼこ型の珍しい形をした魅力的な塀で、切り込みはぎ式と呼ばれる精巧な石組み。この765mにも及ぶ塀が内側の時を止めているのではないかという錯覚に陥る。

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備前焼瓦で葺かれた立派な屋根が印象的な講堂が堂々とした姿を見せる。まばらなオレンジ色の瓦が陽の光を受けて美しく輝く。このまばらなのがいい。塀も同じく自然石なのでまばらな色合いが実にいい。かつて四書五経などの講義が行われていたという講堂に入ると、拭き漆の床がピカピカに光っている。10本の丸柱と火灯窓の明かりが床にくっきり映り込む。なんだか背筋の伸びる空間だ。

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建築名:旧閑谷学校

竣工年:1701

所在地:岡山県備前市閑谷784

入場料:400

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